みずほ銀行との提携

 しかし、チャート分析が全く意味がないのかといえば、そうでもない。
例えば、いま市場関係者の大多数が、三尊天井の権威を認めているものとしよう。
すると、株価が売却点まで下落してきたとき、人々はどう反応するだろうか。
 ここで仮に、株価は上昇に転じる可能性があると考えたとしよう。
しかし、多数の人が三尊天井に脅えて売りに出れば、株価は下がる。
そこで、やはり理論は正しかったかと言うことで、私も慌てて売りに出る。
そして結果的に株価は下がり続けて、三尊天井の正しさが実証される。
このことから分かるとおり、三尊天井に限らずどんなパターンでも、有名になればなるほど権威が高まる傾向がある。
 一〇年ほど前の一時期、テクニカル分析を、かなり詳しく勉強する機会があった。
経済学者の目を意識して、余り深入りしないように気を付けながらの勉強であった。
しかし、実際にゴールデンークロス戦略などを使ってみて、意外に良く当たるものだと感心した記憶がある。
 ところが最近になって、米国の金融理論の中心地であるM大学のR教授と、これまた東部の名門として知られるP大学W校のM教授の二人が、テクユカル分析を詳細に検討した結果、いくつかの戦略についてはそれなりの根拠があるということを示している。
 彼らの報告によると、例えば三尊天井理論にしたがって株を売買すると、取引手数料がなければ、市場平均に比べて四%近く大きな収益を実現することが出来るという。
また売却・購入時点を工夫すれば、より大きな収益を得る可能性もあるという。
 筆者は、最近ロー教授の講演を聞く機会があったが、その徹底した統計分析には全く頭の下がる思いであった。
何人ものドクター・コースの学生をリサーチ‐アシスタントとして雇い入れ、様々な計算を手伝ってもらえる米国ならではの研究である。
この講演を聞いていて思い出しだのは、A氏である。
もしかしたら、A氏を指導したのはR教授ではないだろうか。
 実はR氏‐M氏の研究よりずいぶん前から、実務家や一部の研究者の間では、株価の動きは純粋なランダム‐ウォークではないということは良く知られていた事実である。
例えば、年末年始の株価の動きや小型株の動きなどには、ランダム‐ウォークでは説明できない「アノマリー現象」があることが綿密な統計分析によって検証されているし、最近では、わが国の有力なエンジニアたちが、工学的手法を用いて、過去の株価データをもとに将来の株価予測を行い、“まずまずの”結果を得ている。
 ところが経済理論家の間では、できることならこれらの研究を無視したいという心理が働いてきたようである。
一旦ランダム‐ウォーク仮説を外すと、理論を組立てるのが極めて難しくなるためである。
実際、F氏‐M氏公式などの美しい理論は、ほとんどすべてランダム‐ウォーク仮説の上に構築されてきたのである。
 この件に関して筆者は、数年前に次のような噂を耳にしたことがある。
ある有力な統計学者が、東京市場の株価を綿密に調べる過程で、ランダム‐ウォーク仮説を覆す証拠を発見した際に、この結果を公表させないよう、どこからか圧力がかかったというのである。
 またこれを伝え聞いた有力な経済学者は、”日本市場は米国より遅れているから、効率的でなくとも不思議はない。
しかし規制緩和が進めば、いずれニューヨーク市場のように効率的になるはずだ“とこともなげに切り捨てていた。
 しかしR教授の研究は、世界で最も効率的だとされてきたニューヨーク市場でも、ランダム‐ウォーク仮説が成り立たないことを示したのである。
実際この仮説の下では、三尊天井などめったに現れないのだという。
 人間の心理状態が株価に大きな影響を及ぼすことから見て、株価の動きに何らかのパターンがあるのは、むしろ当然なのかもしれない。
実務家の経験にもとづく主張にはそれなりの根拠がある、ということがここで再び実証されたのである。
 それにしてもR教授らは、一〇年以上にもわたってよく頑張ったものである。
これはやはり、M大学が理工系大学であることと無縁ではないだろう。
 以上の文章を読まれた読者は、テクニカル分析による投資を推奨しているように思われたかもしれない。
そこでバランスを取るために、チャート分析の「落とし穴」についてふれておこう。
 まず第一は取引コストの存在である。
確かに、一九九九年一〇月の手数料の自由化以来、取引コストは激減した。
しかしそうはいっても、やはり取引にはコストがかかるのである。
チャート分析では、いきおい頻繁に売買を繰り返すことになるので、そのコストは決して小さくない。
これを差し引いた純益が、市場平均を“コンスタント”に上回る成果を上げることは、決して容易なことではないのである。
 第二は、チャートを利用した頻繁な取引には、途方もなく時間がかかることである。
勤務を終えて寝る前に一勝負という程度ならともかく、それが昂じて仕事を辞めて日がな一日株取引で時間を費やすティードレーダーを見ていると、その恐ろしさが良く分かる。
 第三は(そしてもっとも大事なことは)、テクニカル分析を用いた資産運用は、どうしてもリスク管理がなおざりになる、という点である。
経験では、きちんと株価をフォローできる銘柄数は三~五銘柄、多くても一〇銘柄程度である。
また資金の量からいっても、購入できる銘柄数は限られている。
したがって分散投資によるリスクの分散など、はじめから無理なのである。
経験をもとに言えば、ギャンブラーの資質がある人だったら、大損しない限りここから脱げ出すのは難しいだろう。
そして多くの人は、リスク管理を怠った当然の報いとして、いつか必ず大失敗をする破目になるのである。
 そこで、これからインターネット株取引を始めようとしている人たちに、数年前に玄人たちが、“最近の株式市場は、玄人たちの取引ばかりで全くうまみがなくなった。
いつになったら個人投資家は戻ってくるのだろう”、と言ってボヤいていたという事実をお伝えしておこう。
 つまり、玄人たちはついこの間まで、市場に素人投資家が居なくなったのでおいしい取引が出来なくなった、と言って嘆いていたのである。
しかし今また市場は、これまで全く株と縁のなかつた投資家たちで賑わっている。
恐らく玄人たちは、好機到来と大喜びしているに違いない。
 テクニカル分析が、過去の株価の動きをもとに将来の株価を予想しようというものであるのに対して、企業の収益構造を的確に分析し、それに基づいて株価を予想するのが「ファンダメンタル分析」である。
 ファンダメンタル分析は、企業や経済のファンダメンタルな要因をもとに投資判断するものだから、その中味は直観によるものから、精密な計算を行うものまで様々なものがある。
これらの中で最も精密なのは、ファクター・モデルを用いる方法であろう。
 株価が、いくつかのファクターに連動して動くことを前提として、そのファクター値を予測することによって、個別銘柄の収益を推定するやり方である。
また、インデックスまたはベンチマークを上廻る収益を得ようとする、様々な「インデックスープラスアルファーアプローチ」も、このカテゴリーに入れることが出来るであろう。
 
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